地域の魅力を発信するお土産づくり

観光や帰省のお土産と言ったら何が思い浮かぶでしょうか?
岡山のきびだんご、岩手のかもめの玉子、広島のもみじ饅頭…。
「これを選べば間違いない!」という、必ず喜んでもらえるお土産品がたくさんありますね。
有名なお土産はたくさんの方に「〇〇県なら〇〇」というように認識され、ブランドが確立されています。

一方で、おいしくて品質がいい地域の特産品がそこまで認知されていないこともあります。観光地でない場合、お土産として認知されにくいのかもしれません。また、お土産を企画して商品化しても地域ブランドとして定着させるのに時間がかかりそうです。
2014年から地域創生が政策として掲げられ、地域の活性化や6次産業化がより注目されるようになりましたが、特産品で地域をPRするには様々な課題もあるようです。

地域の自慢の商品、多くの方に知ってもらいたいですね。
それでは、愛される特産品・お土産をつくるためにはどんなことが大切なのでしょうか。

特産品・お土産で地域をPR

地域・全国区で愛されているお土産の事例を調べ、何が人の心を動かしているかを調べてみました。

地域の共感を得る

地域の特産をブランド化した成功例として宮崎のマンゴー「太陽のタマゴ」がよく紹介されています。
まず地域に向けて商品の良さや生産者のストーリーなどの情報を発信し、県民から共感を得ました。
ネーミングも公募で行い、試食会などでも多くの県民が関わりを持ちました。
地域住民がファンとなり、愛着を持って商品を応援することが生産者への大きな力となります。また、県民もSNSで発信するなど様々な形で参加することから一体感を持ったのではないでしょうか。価値を共有し一つのことに向けて思いが重なったこと、商品が地元から認知・愛されたことが成功した大きなポイントのひとつと言えそうです。

人に伝えたくなるストーリー

地域の歴史・風土・特産、地域の声・生産者の声を元に作成したコンセプトを文章化します。文章にすることで多くの人に思いが伝わりやすくなります。
「おいしかった」以外の情報で記憶に残りやすくなり、心を動かされれば人にシェアしたくなります。

山陰の「因幡の白うさぎ」というお菓子は、出雲神話に登場する大国主命と八上姫の縁を結んだうさぎがモチーフです。「縁」「福」を象徴する縁起のいいお土産で、箱は紐で「御縁結び」をされています。お客様に幸せになってもらいたいという作り手の思いが感じられます。
お菓子も本当においしく、喜ばれる上、「この紐はね…、このうさぎはね…」などと話題もふくらみます。あげる方も、もらう方も楽しい体験になりますね。

キャラクター

地域ブランドとして大人気のキャラクターと言えば「くまモン」です。商品にくまモンのシールが貼ってあれば、誰でも熊本産であると分かりますし、愛らしさになごみますね。「版権フリー」であることが全国に広まった要因の一つと言われます。版権での収入を得ることを選択しなかったのは、地域全体で盛り上げていくというビジョンが見えていたということなのでしょうか。中長期的な目標や計画が見えていることも大切なポイントと言えそうです。

ただ、同じことをしたつもりでも同じように効果を得られるわけではありません。
キャラクターを制作するなら、なんとなく作るのではなく、どんな役割を持たせるのかを明確にします。一時期ブームになったゆるキャラ人気も今では落ち着いていますが、個性や癒し・元気を与えるキャラクターの効果は大きいと思います。対象のお客様層に合うようでしたら設定してみてはいかがでしょうか。

デザイン・コンセプト

(1)越中富山お土産プロジェクトから生まれた「越中富山 幸のこわけ」はよろこびや幸せを分け合う「おすそわけ」をコンセプトにシリーズ化されたお土産です。複数の企業が生産したもともと販売されていた特産品に同じデザインのパッケージを使用することで1つのブランドを構成しています。様々な企業が協働し地域の良さを発信しているのが特徴です。「少量」「低価格」で購入しやすいのもお客様目線です。

(2)栃木県の「バターのいとこ」はワッフルにクリームを挟んだお菓子です。
バターは牛乳の5%しかできず、残り95%は無脂肪乳として安く売られているそうです。その無脂肪乳を使い作られたお菓子で、生産者にやさしく消費者にもおいしい、たくさんの方が笑顔になれるお土産です。パッケージも販売するカフェもシンプルで可愛くオシャレにブランディングされています。
これからの時代このように社会や環境に配慮しているコンセプトに人が集まり発展していくのかもしれません。

(3)水戸で人気の洋食屋、花きゃべつさんと茨城の魅力を伝える「おしゃらぐ農園」がコラボしてできた「茨城おしゃらぐプリン」。
機械を使用せずすべて手作りで水戸の蜂蜜など茨城を中心に食材を厳選。乳化剤や安定剤等無添加で、和三盆糖を用いた上品な甘さ、本来の素材のおいしさを生かしています。ネーミングも茨城弁で地元愛を感じ、パッケージも手描きの温かさ、おしゃれさがあります。可愛い見た目と健康に気を使ったスイーツは手土産に最高ですね。

気をつけたいこと

残念ながら地域ブランド化が失敗に終わる例もあります。

他で成功している事例を、そのまま地元で取り入れようとしても定着しないことが多いようです。地域の個性を生かすことができなければ継続も地域の支持も難しくなります。自分たちで作り上げようという情熱が大切なのではないかと感じられます。
また、オシャレな美しいパッケージはたくさんありますが、その中でも最も人の心をつかむのはコンセプトの魅力のようです。はじめにデザインありきではなく、そのコンセプトにあったデザインを追求していくことが大切なのだと改めて感じました。

おわりに

消費者は自分の価値観にあったお土産を選びます。
オシャレで映える見た目も、もちろん人気の理由になりますが、地域や特産品への思い・考えが伝わらなければ共感を得られません。

今は新しくても50年後に文化になる可能性のあるお土産開発。
地域が一体となって創り上げていく地域のブランドになります。
そのような地域の魅力を発信できるお土産づくりに、私たちもデザイン面で関われたらと考えています。
生産者、地域行政ご担当のみなさま、特産品・お土産をお考えでしたらぜひお声がけください!

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